【 書評 】松田充弘著「会社を辞めない起業」を読んでみた!

書籍

今の勤め先から独立して商売をしたい。

サラリーマンなら誰しも一度は考えたことがあるのではないでしょうか?

私も、例に漏れず定期的に会社辞めて独立したいなぁと妄想しています。

まぁ、私の場合、一国一城の主になりたいって強い想いからではなく、今の状況が不満なので会社辞めたいなぁってだけですが、同じように思ってる人ってかなりの数いるんじゃないですかね?

こんな感じで現状を打破したい感情が隆起してくると、私は起業本を読むようにしています。

そんなに深い理由は無いんですが、起業の指南本を読むことで実際に自分が会社を辞めて独立する際の妄想という名のシミュレーションをしてみたり、独立開業の紹介例を読んで、すごい人がいるもんだなぁと感心したりして気持ちを昇華しています。

“いつか自分も独立するときのために!”といった向上心があって読んでるわけではないですが、勤め人以外で働く場合に何が必要なのかといった知識は、常々必要だなぁと思っているので、この手の本はたまに読んでます。

本書は、たまたまフラッと寄った本屋で見つけて購入したんですが、思いのほか内容が良かったので紹介しようと思います。

それでは、本題へ。

松田充弘著「会社を辞めない起業」

本書タイトルでは“会社を辞めない”とありますが、最終的には会社を辞めて独立するまでの指南書です。

私は、この本のタイトルから会社員をしながら起業してダブルワークをする方法を解説した副業本かと思っていたんですが、まったく違いました。

世にたくさんある起業のノウハウ本です。

ただし、世の中の起業の指南書と意識的に差別化しようとしてるところは、事業が軌道に乗るまでの間は会社勤めを続けて、独立してやっていける目途がついたら辞めましょうと推奨している点に重点を置いてるところではないかと思います。

とは言え、他の起業を促す本も、いきなり会社辞めて突っ走れとゴリ押ししているわけでもないので、特別この本が他の起業本とは、まったく毛色の違う本だとまでは言いません。

本書は、独立するまでの会社との付き合い方や、独立する前の試金石のやり方などを詳しく解説していて、割と実践できそう内容を解説した本だと思います。

本書の良かった内容

本書は、あくまで将来起業して独立する事を目的としたビジネスマンを対象に書かれており、夢物語のような方法論ではありません。

著者が起業家のようで、これまで自身が実践してきた内容やコンサルティングとして他者に師事してきた内容などを紹介しています。

更に、第一章の冒頭から「遊び時間を捨てられますか?」と問いかけており、淡泊な表紙とは裏腹に、けっこうストイックな著者の主張が繰り広げられています。

勘違いしないで欲しいのは、独立するためには遊んでる時間なんかないぞっていう脅迫ではなく、遊ぶ時間を犠牲にしても構わないと思えるぐらいやりたい仕事を見つけましょうという意図です。

私の感覚で解釈すると「遊ぶ時間を犠牲にする」というより、「時間を忘れて没頭できるようなビジネスを見つけましょう」という表現の方が正確な気がします。

こんな感じで、本書序盤は起業するにあたってどんなビジネスをするかを探るための自己分析の方法を紹介しています。

自分に合った、時間を忘れて熱中できる仕事を見つけられるのは、働くうえで非常に幸せなことなんじゃないかと思います。

四六時中夢中になれて、且つ、生活できるだけの収入が得られる仕事に巡り合えたらどんなに幸せなことか。

私は、それができずに腐り果た結果、ぶら下がリーマンになってしまったワケですから痛いほどよくわかります。

何も自立しなくても、サラリーマンであってもやりがいを感じて楽しめる仕事に出会えれば、それでも良いような気もしますが、本書はあくまで起業本なので、2章以降は起業するためのビジネスの種の見つけ方や、その育て方を解説しており、3章以降では、会社との折り合いをつけながら起業する方法などを解説しています。

正直、前半の起業のための自己分析や、どんなビジネスをするかといった解説は、他の起業本と大差ないように思います。

あまり差別化しにくい部分でもあるので、ほかにこの手の本を複数読んでいる人からすると、斬新な内容ではないんじゃないかと思います。

ですが、これまであまり起業本なんかを読んだ事の無い人なんかには、起業までのワークフローや、そのための時間管理術なんかも紹介されているので、サラリーマンとして働くうえで役に立ちそうな情報も記載されています。

但し、起業初期のサラリーマンとの二足のわらじ状態の期間の過ごし方は、個人的にあまり参考にできないかなと思いました。

本書では副業NGの会社で務めている場合の、起業前の準備の方法を解説していますが、そのやり方がやや現実的ではないように感じます。

簡単に内容を説明すると、本書の著者は、副業禁止の会社に勤めている場合は、起業する予定のビジネスが成立するかどうかを調べる事に専念するよう促しています。

つまり、お金をもらわずに、起業を予定しているビジネスを行ってみて市場の反応を見るようにしましょうと言っています。

無償でのサービス提供ですが、十分集客でき利益が得られるぐらい世の中にニーズがあるかを分析して、失敗する可能性が低いと判断できてから、会社を辞めて独立しようと提案しているのです。

一見、合理的で悪い提案ではないように見えるかもしれませんが、私としては、あまり良い方法とは思えません。

詳細は後述しますが、個人的には、まず実現できないだろうなと思います。

後は、起業するにあたって法人化するかどうかや、確定申告の色なんかの話題も、私はあまり勉強してなかった内容なので参考になりました。

文章や構成が簡潔でわかりやすく、読みやすいのも本書の良い部分だと思います。

本書のイマイチだなと思った点

当たり前かもしれませんが、本書も良い内容ばかりだったわけでなく、少し、著者の見解に異を唱えたいなと思った部分があるので、その辺も紹介しておきます。

イマイチポイント①:最初は無償でサービスを提供する

良かった点でも触れていますが、副業NGの会社での起業方法は、少し引っ掛かる部分がありました。

それは、会社を辞めない間は、自身のビジネスを無償で提供して市場の反応を見るというやり方です。

無償でサービスを提供して、そのビジネスのブラッシュアップをするというのでは、根本の有償で成り立つかどうかの検証は、まずできないと思っています。

どういう事かというと、「タダだから頼むけど、お金取るなら頼まない」って人結構いると思うんですよね。

著者も「無料なら頼むけど、有料なら頼まない」との反応があれば、ビジネスの内容を見直して磨き上げなければいけないと言っていますが、無料でやってる間は、まず無理です。

では、どうすれば“お金払ってでも頼みたいと思ってもらえるか”を知ることができるのかですが、答えは単純で、結局そのサービスでお金を取るしかないです。

無償でやってる限り有料化後の見通しは、まず立たないと思います。

身近な例をだすと、Youtubeの動画とかがいい例だと思います。

有名なヒカキンとか、はじめしゃちょーの動画であっても、タダだからたくさんの人が見ているってだけで、有料であれば恐らく再生数は激減するんじゃないでしょうか?

さらには、有料化でどのぐらいまで低下するかは、無料で提供したデータからでは見通せないと思います。

また、無料だったサービスを途中から有料にするというのも、初めから有料だった場合にはない弊害があります。

消費者は、基本的に身勝手なので「今までタダだったものを、有料にするのはけしからん」と自己中心的に捉えがちです。

そういう人たちが、ただ離れていくだけなら良いですが、SNSなどでネガティブな風評をばらまく恐れもあるため、無料で餌まきして、人が集まったら有料化っていうのは、私としてはイマイチだと思ってます。

ちょうど本稿を執筆しているのと同じタイミングで、楽天モバイルがこの失敗をしています。

簡潔に説明すると、楽天モバイルが一年ほど前に料金0円(1GB以下)でサービスを開始して、最近、0円を撤廃して基本料を全ての契約者に課すと発表しました。

すると、ネットニュースやYoutubeに楽天の料金見直しは改悪だといった批判が噴出しました。

もちろん0円で人を集めて、突然0円撤廃しますと言い出す楽天も叩かれてもしょうがない部分はあると思いますが、それでも、0円で使えなくなった事を、さも自分たちの権利が奪われたかのように声高に文句を言う乞食たちは、かなりタチ悪いなぁと思いました。

タダとか格安といった値段の安さを売りにして商売を始めると、こういった質の悪い人間を引き寄せてしまうので、尚更、無料でサービスを提供するのは止めた方がいいと思います。

イマイチポイント②:雇用形態を不利な条件に変える

副業NGの会社での起業の方法で、正社員から業務委託契約に変えるといいとも提案していますが、コレは結構リスクが高いのと実現する可能性がかなり低いように思います。

正社員から業務委託契約に変えるのは、単純に退職なので、起業に失敗しても戻れません。

また、業務委託契約自体を会社側が結んでくれる可能性も低いんじゃないかとも思います。

業務委託を受けるには、経験やスキルがちょっと高いって程度では恐らく無理で、よっぽどの独占業務を持ってるぐらいじゃないと難しいと思います。

業務委託で出す側の立場から考えればわかりやすいですが、会社を辞めた個人には信用がありません。

会社を辞めてほかの仕事をやろうとしている人間に対して、会社側がいつまでも正社員時代と同じように信用することは、まずありません。

むしろ、他のやりたい仕事を優先して、依頼した仕事をきちんとやり遂げてくれないんじゃないか?と疑ってきてもおかしくありません。

会社側は、自社の仕事を円滑に回すことが重要なので、辞めた社員に業務委託をするぐらいなら、残りの社員で振り分けるか、それが難しいなら、確実に成果を出してくれるであろう他社に外注すると判断します。

私が会社側の立場なら、業務委託してくれと言われても断ります。

他にやりたいことがあって、今の会社の仕事に専念できないなら潔く辞めて、やりたい事に集中してくれって言い渡しますね。

たぶん、どこの会社も同じように考えるんじゃないかなと思うので、業務委託契約に切り替えるって案は、まったく現実味がないと思います。

まとめ

イマイチだなと思う点の方が長くなってしまいましたが、要点は2つしかなく、本書で書かれていることは、起業だけではなくサラリーマンとして働く上でも有益な内容だと思います。

何も独立しなくても、今務めている会社内で新しい事をやりたいと手を挙げるための基礎知識として知っておいて損はない内容だと思いました。

40過ぎてから起業する人も世の中にはたくさんいるので、私もいつか“コレだ”と思えるモノと出会えたら、本書を参考に会社勤めしながら挑戦してみましょうかね。

と言っても“コレだ”と思えるモノに出会うのが何より難しいんですが。

じゃ、そんな感じでノシ

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