【書評】森岡毅著「苦しかったときの話をしようか」を読んでみた【前編】

書籍

皆さん仕事は楽しいですか?

私は、まったく楽しくないです。

私は「働きたくないでござる!」が根本にある人間なので、働かずに生活できるのが理想なんですが、非常に欲が強く、その強欲を満たすために嫌々働いています。

そのせいか、書店に行くと必ずビジネス書をさっと見て、自分の手間を少なくできる情報が載った書籍はないか探す癖があります。

新卒で社会人なりたての頃は“仕事術”や“メモ取り手帳術”、“プレゼン資料の作り方”なんかの書籍をよく読んでいました。

さすがにもう17年働いているので、その手の新社会人向けの本は読みませんが、それでも扱うテーマが面白そうな本があれば購入して読んでいます。

前回の記事で紹介したRPAの本なんかが良い例ですね。

今回紹介する本は、表紙の「ビジネスマンの父が我が子のために書きためた働くことの本質」とのサブタイトルが目に留まり読んでみることにしました。

さすがに私も40過ぎているので、自分なりの仕事に対する定義や、自分の働き方というものは、ある程度出来ています。

それが正しいかどうかの答え合わせがしたいなどとは一切考えておらず、他者の仕事に対する考え方が、どんなモノなのか興味が出たって感じですね。

もう一つ、父親が子供のために書いたってところも興味を惹かれた部分です。

読んでみた感想としては、割と共感できる主張が多く、面白い内容でした。

20万部以上売れているようですが、この本の普及の小さな一助になればと思い、私のブログでも紹介してみようと思います。

それでは、本書の紹介へ

著者 森岡毅氏とはどんな人?

巻末のカバーに著者の略歴が書いてありますが、かなりのキャリアを持った方のようです。

この本を手にするまで、著者を知らなかったんですが、スーパーエリートと言っていいような人物ですね。

簡単に紹介すると、神戸大学を卒業後P&Gへ入社し国内、国外でマネジャー職を歴任した後、USJへ転職して再建を担った凄腕のマーケターとの事。

現在は、ご自身が代表を務めるマーケティング会社を経営されているようで、絵に描いたようなエリートビジネスマンですね。

すごい人だ。

本書の構成

この本は、著者が娘に向けて書いた文書を、書籍にして上梓したモノだそうです。

出版社の担当者に、たまたま見せたら気に入られて書籍化しようと言われ発刊したと説明されていますが、この下りは、たぶん嘘ですね。

嘘という表現を使うのは、適切ではないかもしれませんが、読んでみた感じとしては、しっかりと上梓するのを目的として文章が書かれている印象でした。

随所にある言葉の選び方や表現、聞きなれない言葉の説明、挿絵なんかも不特定多数の人が読むのを前提に書かれているように感じました。

さらには、著者が書いた他の書籍の紹介も前後の文脈に違和感なく、所々に仕込んであるので、まずこの本は家族向けの作文が元ってのは違うでしょう。

私が思うに、著者がマーケターとの事なので、この本を多く売るために効果的な購買者への訴求方法として、本自体の生い立ちを独特なものにして興味を集める方法をとったのかなと思います。

もう少し詳しく書くと、この本は恐らく、きちんとした企画の上で書かれた本で、本書の内容は、新卒や転職を考えているような、現状が変わる、もしくは現状を変えたい人向けのキャリア構築のための指南書です。

著者がビジネスマンとして実績のある有名な人物で、自身の実体験を盛り込んでいますが、ただのキャリア構築の指南書として発刊しても、少し弱い。

そこで、星の数ほどあるビジネスマンのキャリアアップの書籍と並んでも、この本が他の類似本とは一線を画して、たくさんの購買者に興味を持たせる戦略として「父親が娘に宛てた文章」という背景を設定したんだろうと思います。

まぁ、なかなかよその家庭の父親が、娘に書いた手紙を読む機会なんて無いですからね。

そりゃあ興味湧きますがな。

この考察は、著者を貶める目的はなく、超がつくレベルのマーケターが著者ならば、自身の著書の販売で、こういった手法ぐらいサラッとやってのけるだろうという敬意から書いてます。

本当に発刊の経緯が本書内に書いてあるとおりだったらゴメンナサイ。

本書の内容は、とにかくストイック

著者が自分のことをイノシシと形容していることからも、かなりゴリゴリで働くことを推奨しています。

ビジネスマンとして成功すること、成長することを前提として、そのために必要なマインドの持ち方や、フレームワークを解説しています。

娘が就活生であることから、就職活動で成功するために必要な自己分析と戦略から始まって、就職した後のビジネスマンとしての成功のために必要な行動様式について熱心に綴っています。

この本で主張している内容は、就活生に限らず、あらゆるビジネスマンが一度読んでみても良いと思うぐらい、私にとって非常に共感できるモノでした。

序盤に書かれている「会社と結婚するな。職能と結婚せよ」の章は、私の考えと全く同じと言っていいほど共感できる内容で、著者に賞賛されているような気分にすらなってしまいました。

手前味噌な話になるかもしれませんが、私自身、会社務めをしていますが、出来る限り会社に依存しない人間になる事を意識しています。

その考えに至った経緯について、少し書いてみます。

私は10年以上前に転職していますが、私が新卒で入社した前の会社は、もうありません。

経営破綻して外資の同業他社に買収されたのですが、この出来事が、私の意識を「会社に依存しない人間になる」という方向に導いた主な要因です。

新卒で入社した会社に勤めていた頃の私は、社内で評価を上げることや、昇進することを目標に、毎日日付が変わるまで仕事していたんですが、リーマンショックや、その後の円高のあおりをくらい会社の業績が悪化。社内の雰囲気も下向きになり、徐々に会社を離れる人が現れ始めていました。

ちょうど30歳の若手でしたが、「もしかして、この会社危ないんかなぁ」とぼんやり感じていたことと、翌年には娘を保育園に入れなければならないことも相まって、転職を決意し、今の会社に移りました。

結果、私が退職したのが11月末だったんですが、翌年の1月に新卒で入社した会社は倒産しました。

前の会社は、結構な規模の大手企業でしたが、市況によっては、どんな巨人も倒産に至ると学んだ私は「自分は、これが出来ます」と言えるモノを持たないといけないと真剣に思ったのを、今でも覚えています。

その後、自分の専門や適性を考え、まずは今の会社でマイノリティーで貴重な存在になるため電気主任技術者の資格を取得しました。

電気主任技術者は、一定の規模の工場では法律で必置が定められている資格なので、今の会社が倒れたとしても、次の仕事を探すのに苦労が少なくてすむだろうと考えたからです。

この辺は著者の言う職能(スキル)を身に付けろってのと、ばっちり合致します。

著者が主張する職能については、一つだけの技能に特化するのではなく関連する職能も並行して身に付け、それら複数の職能の掛け合わせで、他者より秀でたビジネスマンになる事を推奨しています。

今の私の会社は、いわゆる中小企業で、前職よりはるかに規模の小さい会社に転職しました。

その理由は、前職の経験から役割分担が細かく明確になっている大手で、特定の業務に特化するのではなく、生産技術や設備技術の分野を広く経験して多能なエンジニアになりたかったからです。

もう一つ、転職先を地元に限定したのもあります。

私の妻も同郷だったので、家族で地元に帰る事にしました。ですが、私の地元はド田舎なので、そもそも前職ほど大きな会社が少なく、募集のあった職種もあまり私の興味を引くものがなかったので、今の会社にしました。

今の会社では採用直後の配属が面談時と異なり、製品開発の部署に振り分けられてしまいましたが、それではこの会社の業務に特化した知識と技術しか身に付きません。

私は、どこに行っても通用するポータブルスキルを獲得したかったので、会社を納得させるため電気主任技術者を取得し、設備関係の部署に異動させてもらいました

但し、開発部門も人手が十分ではなかったので、移動の希望を出してから叶うまで数年程かかりましたが。

部署の移動後は、電気設備の管理のみでなく、工場で使う生産用の自動機の制作や改良、維持・管理も手掛けているので、この本の著者の推奨する複数のスキルを身に付けてレアリティーを上げる事になっていると思ってます。

あんまり電気主任技術者で、自動機の機械部品の設計や、PLCを用いた制御にも明るい人材なんて多くないんじゃないですかね。

つまり、著者の推奨するキャリア形成を、この本を読む以前から私自身が実践して来ているので、やはりここでも本書の著者は、私の自己肯定感を高めてくれました。

やっぱ、オレすげぇ。

私の話はこの辺にして、書籍の話に戻ります。

著者は、ゴリゴリのビジネスマンで、仕事することを生きがいとしているようで、その意欲の源泉は「欲」だと語っています。

「欲」を満たすことに正直に、最善を尽くすことを推奨しており、そのために必要な努力を惜しまず、常に精進し続ける事を強く進めています。

昨今では、ミニマリストに代表されるような質素倹約な生活スタイルや、月10万円で豊かに暮らす方法といった、物欲や自己顕示欲をなくして植物のように生きることを良しとする本や動画が溢れている中で、ストイックに上昇志向のみを前面に押し出し、自己実現に邁進することを書いた本書は、得も言われぬ清々しい印象を持ちました。

本書の中で、直接批判的なことは書いていませんが、深読みすると、この本の著者は、欲の少ない人や、収入を増やすために自己研鑽を怠る人を、あまり良く思ってないのかな?って気はします。

とにかく、何事も「倒れるときは、前のめりだ!」って感じで突っ走れと主張しています。

実にストイックだ。

就活生や新社会人向けの有益なアドバイスが満載

本書では、キャリア形成は各個人の適正を自分自身できちんと把握し、強みを鍛える事で勝ち上がっていくことを進めています。

自分の適正を調べるフレームワークの具体的なやり方や、その結果の活かし方などを詳しく説明してくれています。

このフレームワークは、就活中の学生さんなんかには良さそうですね。

他にも面接やプレゼンなんかの方法や気持ちの持ち方などを詳しく書いています。

その中で、著者は「面接やプレゼンは、“伝え方が9割”ではなく“内容が10割”だ」と書ききっています。

これは声出して笑ってしまった。

社会人になると、色々なセミナーやプレゼンを聞く機会があるんですが、あの手この手で表現して見せ方だけは熱心に工夫してるのに、中身が薄っぺらかったり、ありきたりだったりすると、聞く必要なかったなぁとうんざりするので、まったくその通りだと、笑ってしまいました。

更には、社会構造に関しても書いてあり、資本主義社会の構図をわかり易く説明してくれています。

この部分だけ大雑把に要約すると、今の資本主義社会は、資本家が利益を得るようにできており、サラリーマンとして会社務めをしている人たちは、資本家の養分にされているのだと書かれています。

資本家が有利な世の中になっているっていうのは、私自身40歳近くなるまで、あまり理解できていませんでした。

収入面での将来設計をもっと若いうちに、しっかりと考えておけば気付けたかもしれませんが、20代や30代中盤までは、まったく理解しておらず、そもそも社会構造がどうのこうのっていう発想自体ありませんでした。

こういった話は、時期がきたら私の子供たちに話してみたいと思っています。

まとめ

久々に共感に満ちた本だったので、紹介記事も長くなってしまいました。

まだまだ中身に関して感想を書き綴りたいところですが、ひとまず今回はこれで終わりにしようと思います。

ただ、仕事の本質と書いていて、成功の道筋を書かれていますが、私がサラリーマン生活を送りながら実感した成功の条件が書かれていないのと、内容としてあまり万人向けではない部分もあるなぁと感じる部分もあるので、後編に私の考えを織り交ぜて続きを書こうと思います。

本書は、これから社会人になる人だけでなく、今まさに社会で揉まれている多くの人にも刺激のある内容だと思います。

私も今の仕事で、より高い成功をめざして、少しでも楽しめるようになるように、工夫してみようかなと思わされました。

個人的に気に入ったのもあり、森岡毅氏の「苦しかったときの話をしようか」オススメします。

じゃ、そんな感じでノシ

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