【 書評 】藤原裕著「教養としてのデニム」を読んでみた!

書籍

面白かった!

最近、割とまじめな本の方が多かったのもあって、久々に読む趣味一色の本は新鮮で面白かった。

私も十代の頃からのジーパン好きってのもありますが、この本は書店で見つけた瞬間“読みたい”と思ってしまい、即座に購入。

しかも、本を買う時には気づきませんでしたが、著者が私の好きなユーチューブチャンネルを運営している方で、尚更楽しみながら読む事ができました。

こういう好きを極めた人の話は、どんなジャンルであっても大抵面白いんですが、本書は書籍としても文章が読みやすく、著者が聡明な方なんだろうというのが分かります。

以前読んだ筋トレの本のような悪ノリ無しで、最後まで興味深く読ませてくれる本なので、良書だなぁと思いました。

ちなみに私は普段ジーパンと呼んでいますが、本稿ではちょっとカッコつけてジーンズと表記しています。

ジーンズと呼ぶのは、少し違和感というか、むず痒いモノがあるため妙な文章になってそうなところもありますが、気にせず読み進めてください。

それでは、本題へ。

藤原裕著「教養としてのデニム」

今回紹介する「教養としてのデニム」は2022年4月1日に初版出版の新書です。

著者の藤原裕氏は、ベルベルジンという原宿の老舗古着屋のディレクターとのことで、前々からYoutubeの動画はいくつか視聴していました。

この本では、基本的にジーンズの歴史と、ビンテージと呼ばれているジーンズに関して書かれた本で、コーディネートや現在のトレンドを解説するファッション誌ではありません。

年齢は、藤原氏の方が私より少し上のようですが、世代的には近いので昔話っぽい話題は、読んでいて私も懐かしいなぁと思いました。

私の人生は、ほぼ田舎で過ごして来たのと、そこまで着る物に頓着が無かったので、著者ほどの熱量はありませんでしたが、それでも、仲間内でジーンズの色落ち具合なんかを話題にして盛り上がったのを思い出しました。

男臭い内容の本

今ではジーパン自体はユニセックスな衣類ですが、本書で主に取り扱うビンテージのジーンズは、さすがにあまり女性受けはしないだろうと思います。

本書の中でも女性のビンテージのジーンズ好きとの対談がありますが、その中でも珍しいとあり、この本の内容は、ほぼ男性向けとなっています。

まぁ、本書で詳しく書かれていますが、ビンテージのジーンズはどれも出自がアメリカの屈強な炭鉱夫向けのズボンだったので、そもそも女性をターゲットに作られてないんだから当然ですよね。

私の個人的な好みですが、20年ぐらい前に売れてた女性2人組のPUFFYのようなオーバーサイズのジーンズにTシャツ姿の女の子は結構好きなんで、令和の時代でも流行ったらいいなぁと思うんですが、ほぼ街中で見かけません。

ビンテージジーンズという価値は日本人が生み出したらしい

私の感覚では、アンティークとかの古いモノに価値を付けるのは外人の富裕層が得意なのかと思ってましたが、ジーンズに関しては日本人が先駆者だったそうです。

80年代に日本人がアメリカの不良在庫として抱えられていたモノや、どこかの倉庫で大量に眠っていたモノを安価でかき集めて来て日本で販売したのが、ビンテージジーンズの始まりらしいです。

現在では、ビンテージジーンズの代表格のLevi’s 501XXは、一本200万円もするそうです。

この金額になると、本書でも触れていますが、もはやビンテージジーンズは嗜好品ではなく投資対象ですね。

とてもじゃないですが、私では手が出ません。

世界中にコレクターがいるとはいえ、こんな値段になっているとは驚きました。

これから先も今ぐらいのジーンズ人気が継続するのなら、現行品のちょっと高級なジーンズを数本買っておいて30年ぐらい寝かせてみようかなって気になってしまいます。老後の蓄えとして。

さすがに、しませんが。

ビンテージジーンズの魅力

著者は、十代の頃からビンテージジーンズが好きだったとの事で、本書ではその熱意がこれでもかってぐらい強調されています。

この辺は、古い時代のジーンズそのものが好きってのはあるとして、それよりも「今の時代では簡単に手に入らないモノ」っていうバイアスの方が強いように感じました。

コレクターの心理なんですかね。

古いジーンズには当時の製法だから出せる経年変化があるらしく、それが主な魅力だと語っていますが、私の印象だと、他人と被ることが無いレアなアイテムを探し出したってのが一番の魅力のように思います。

本書の著者や世の中のビンテージ好きは、だいたい量産型のジーンズでは満足できず、お金出せば手に入るって訳では無い一点ものが好きな人たちなんでしょう。

好きなモノへのこだわり方として、この嗜好はとてもよく分かります。

この手のマニアはいつの時代にもいると思うので、上述したように、今のうちに投資として、現在流通しているジーンズを大量に捕獲しておくのは、結構いい案なのかもしれません。

ジーンズ以外だと、エレキギターなんかも投資の対象になりそうな気がします。

どちらにせよ、私はしませんが。

ちなみに、基本的に私はビンテージのジーンズにあまり興味がありません。

デッドストックと言われる未使用品であれば持っててもいいなぁとは思いますが、どこかの誰かが穿き倒した古着は、どんなにレアでも正直いらないです。

今までの人生で古着と言えるモノは、子供の頃に貰った親戚からのおさがりぐらいで自費で古着を買ったことって、一度も無いんですよね。

じゃあ、なぜビンテージジーンズ関係の本とか動画見てるのか?って話なんですが、ジーンズの色落ちは、昔から結構気にしていて、その参考に動画とかを見てるんですよ。

本書に一つ紹介されている色落としの裏技は、昔、なにかで聞いたことはあったんですが詳しくは知らなかったので、機会があれば試してみようと思ってます。

本書で唯一しっくりこなかった部分

ユニクロ全面推しの節があるのがひっかかりました。

ビンテージの対極になりそうなファストファッションの量産ジーンズの代名詞的なユニクロジーンズを、この著者が絶賛しているのが、妙に違和感があります。

ユニクロ以外でも日本のジーンズメーカーやカイハラデニムといった生地メーカーにも触れていますが、それらはビンテージのレプリカを作ってるとか、カイハラデニムは、リーバイスなんかの海外メーカーに採用されてるとかで、話題に上るのは自然だと思うんですが、ユニクロだけ不自然。

ジーンズの歴史とか、ビンテージデニムを主な話題にする本に、敢えてユニクロを出す必然性が、全く感じられないんですよね。

仮に、本当にユニクロのジーンズが、本当に良質なモノであったとしても。

ユニクロに数ページであっても使うぐらいなら、岡山のジーンズメーカーとかの紹介にもっとページ数を使う方が本書の趣旨に沿っていて良かったんじゃないかと思います。

邪推ですが、この本や出版元、もしくは著者の勤め先のベルベルジンが何かしらの形でファーストリテイリングの息が掛かってたりするんですかね?

資本面で出資を受けてるとか、商品の買い付けに関わってるとか。

この辺は、私には分かりませんが、本書でユニクロを持ち上げるのは著者の意図とは別の何かを感じざるを得ず、非常に残念です。

特にユニクロのジーンズ製造工場では「使用する水や薬品の使用量を削減して、環境負荷の低減に取り組んでおり、昨今のSDGsに対する取り組みを、いち早く実践している素晴らしい企業です」といった感じのベタ褒めをしてますが、私のような製造業のエンジニアからしたら「いやいや、それは全然違うぞ。」とツッコンでしまいました。

ユニクロに限らず、どこの製造業の会社も、商品の生産に関わる資材の利用効率を上げる事には、呼吸するレベルで取り組んでいます。

工場で使用する水や薬品などはランニングコストと言って、これらは商品を作るためにかかる経費です。

生産する商品の種類によって必要なコストは変わりますが、他にも代表的なところでは、工場で消費する電気なんかもランニングコストに含まれます。

仮に5,000円で販売しているジーンズを作るために、3,000円の水や薬品やその他の経費が掛かっているのであれば利益は2,000円ですが、それら水や薬品の量を減らして2,000円分の消費に抑えれば利益は3,000円になり、経費削減分が利益として増えます。

これはかなり単純化した例え話ですが、こういった経費削減は、薄利多売の製造業のみならず、あらゆる企業で当たり前のように取り組まれている事です。

なので、取り立てて褒め称えるような事をしている訳でもないのに、ユニクロをここまで絶賛する理由が分かりません。

そもそもファーストリテイリングの柳井正に、環境保全とかの崇高な思想は1mmも無いですよ。

反日企業ですし。

このユニクロに触れた節だけが、どうも釈然としないですが、それ以外は特におかしな話も無く、楽しく読む事ができました。

読んでるとジーンズの購買意欲が湧いてくる危険な本

私が浪費家だからなのかもしれませんが、この本読んでるとジーンズが欲しくなってしまいました。

久々にリジッドのLevi’s 501の現行品でも買おうかと思いましたが、ヒゲやハチノスをバシッと出したいなと思ってしまったので、ジャストサイズを買うために近所の店に行ってワンウォッシュの501を購入。

リジッドの糊落としの儀は結構好きなんですが、それはまた今度。

最近は年のせいか、ジャストサイズより1~2インチ大き目を選んでたんですが、今回はジャストサイズから穿き込んで、学生時代のジーンズ並みの色落ちを目指そうかと思ってます。

20年前の学生時代はバイクに乗っていたこともあって、もっぱらブーツカットを穿いていたんですが、当時のジーンズは色落ちが気に入ってて未だに手元に置いてあるんですよね。

さすがに今は穿いていませんが。

そのうちの一本がこちら。

果たして、衝動買いした501はこんな感じで色落ちしてくれるんでしょうか?

楽しみです。

まとめ

月並みな感想だと「この本を読んで、ジーンズの奥深さを知り、ますます好きになりました」って感じでまとめるのかもしれませんが、私の感想は「こんな高っかいビンテージジーンズ、一生買わんな」です。

ジーンズの歴史やウンチクを知るのには良い本なので、書籍としては面白いのでオススメです。

ビンテージジーンズが好きな人を否定する意図は全くないですが、やっぱり私は現行品がいいですね。

いつでもどこでも手に入るモノで十分です。

価格も、よっぽど気に入ったジーンズでない限り1万円以上出したくないですし。

ただ、にわかレベルのジーンズ好きの私の希望としては、ここ数年流行ってるスキニーとかのピチピチジーンズとか、足首が見えてる寸足らずな穿き方は終わって欲しいかな。

女の子でピチピチのジーンズ穿いてるのは眼福ですが、男でピチピチ穿いてるのは見かけると純粋に気持ち悪い。

まぁ、どんなジーンズ穿くかはその人の自由なんで、どうしようもない事なんですが、昔の浜田雅功みたいな感じの着方が、私は今でも好きですね。

長くなりましたが、今回はこの辺で。

じゃ、そんな感じでノシ

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