この記事は、上村紀夫著「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人 さて、どうする?」を読んだ感想の後編です。
前編が、未読の方はそちらもどうぞ。
前編では、本書の前半の部分に関して著者の意見と私の経験を対比して記事を投稿しました。
今回は、後半部分に関して触れてみようと思います。
それでは、本題へ。
会社の病の診断とその対処法
本書で、個人的に一番重要なポイントだと感じたのが、これから紹介する社員の階層化です。
著者は、社員を大きく5つのグループに分けて、会社が大切にするべき優先順位をつけています。
社員のグループ分けと、簡単な定義を説明すると、こんな感じだそうです。
①優秀人材:すでに組織の牽引役となっている人材
②ハイポテンシャル人材:3~5年後に優秀人材になっているであろう人材
③立ち上がり人材:入社から1年以内(新卒・中途問わない)の人材
④普通人材:やるべきことはきちんとこなす人材
⑤ぶら下がり人材:消極的定着(ぶら下がり)している人材
各グループで、おおよそどんな人材のことかはグループ名を見ただけで見当がつきます。
言葉の説明として、消極的定着とは、会社に不満はあるが、他の会社へ移ろうとしない、もしくは移る能力がない人間のことを指す著者の造語です。
著者は、この5つのグループの中で②ハイポテンシャル人材と、③立ち上がり人材を優先して大事に扱う事が重要だと説いています。
会社の仕事をする上での働きがいや働きやすさの改革は、主にこの2つのグループの人材に効果があるよう行うように提案しています。
著者の階層化に対する私の感想
本書後半の内容は、主に上述した②ハイポテンシャル人材と、③立ち上がり人材という会社内の有望株にとって、働きがいがあって働きやすい環境を整える方法を、例を交えて説明しています。
その辺の有望株を大事にする方法などが知りたい方は、ぜひ本書を手に取って読んでみて欲しいと思います。
ここからは、本書の内容の要約ではなく、私が読んだ感想です。
本書では、優先度が低い側の人材に対してあまり口数多く語られていません。
①優秀人材に関しては、個人の能力が高く会社に対して不満はないもののより良い環境を見つけた場合、積極的に転職していく可能性が高いため、あまり重視しないほうが良いとしています。
この①優秀人材に対しての会社の態度は、特に思うことはありません。
それらとは対照的に、優先度が低い人材である④普通人材や⑤ぶら下がり人材に関しては、ほとんど何も語られていません。
つまり、著者は④普通人材と⑤ぶら下がり人材は、どうでもいい人材群と考えているのでしょう。
本書は、経営者向けに書かれた内容のためというのもあると思いますが、基本的に会社側にとって有益であるために、人材の選別や扱いを書いた会社寄りの内容です。
本書の人材選別から見える社員の構成や、著者並びに会社の思惑は下記のような感じだろうと思います。
- 能力が高いが、その分雇用にコストのかかる優秀なベテランは居ても良いが、出来れば他社へ移ってほしい。
- 数年後には仕事を牽引する可能性のある優秀な中堅社員を、優秀なベテランに置き換えてメインにすることで、人件費を高騰させずに仕事の質を維持したい。
- 新たに入社した社員は、人件費が安いのに仕事に対するモチベーションが高く、中堅社員からも使いやすい人材なので重宝する。
- 言われた仕事しかしない、できないような人間はいらない。
4項目ほど挙げていますが、まだまだ他にも読み取れる部分はあると思います。
著者が会社側へ提案するコンサルティングの骨子は「人件費を抑えながら、会社の生産性を維持、または向上させる」といったところだと、私は読み取っています。
少し嫌な表現になりますが、私には“会社は慈善事業をやっているわけではないので、自社の利益を増やすために人材を適切に消費しましょう”と提案しているように見えました。
ぶら下がり社員を自称する私に言う資格があるかわかりませんが、この著者の主張は、何ら異論の無い当然の考え方であると思います。
この本の人材選別の内容は、恐らく世の中のほとんどの会社の本音と解釈して差し支えないでしょう。
さらに、今後、日本にある様々な会社が、この考えを元にした人事制度を作り出していくだろうと予想しています。この世にある全ての会社は、そこで働く社員を養うために存在しているのではないですから。
なので、本書の内容は経営者や人事労務担当者ではなく、どちらかというと会社勤めをしている人の方こそ、本書を読んで会社側の思惑を正確に認識したほうが良いんではないかと思います。
少し前にもサントリーの社長が45歳定年と言って盛り上がっていたように、人件費の高騰するベテラン社員を居座り続けさせないような取り組みを表に出てこないだけで、沢山の会社が着々と進めていると考えて、若いうちから備えておくべきでしょうね。
自分では一生懸命会社に貢献していると思っていても、会社側から見たらただの普通人材なので要らないって切り捨てられる可能性は十分あるのですから。
まとめ
今の私の仕事の内容とは、一切無関係な本書ですが、結構面白く読むことができて良かったです。
それでも、どうもこの著者は、お上品な例を挙げるところが多かったせいか、私の実体験と合わないのがしっくりきませんでしたが、たぶん、私が書いた実体験のケースも何度も見聞きしてるんじゃないかと思います。
ただし、それを例に挙げてもストレッサー側が無能過ぎて対処できないって結論になるだけだから書かなかったんでしょうね。
会社は人で成り立っているので、人材面での苦悩は経営者だけじゃなく、現場で働く人たちにとっても常に悩みどころです。
私も周囲に頭おかしいのかな?って人が、ところどころに居て嫌になるんで、今度は、人付き合いの本でも探して読んでみようかな。
有名なところで「アホとは戦うな」とか。
前編、後編と割と長くなりましたが、本書の感想文はこの辺でおしまいにしようと思います。
人事コンサルっていう人たちが何やってるのか、ぼんやりとしたイメージしかなかったのですが、文章で読んで割とはっきりと理解できて良かったかな。
私は、会社から「お前、もういらない」っていつ言われても大丈夫なように、少しづつ準備しようと思います。
最後に、この本、少し読みにくい。
じゃ、そんな感じでノシ