年明けからどうも私の中の読書スイッチが入ったようで、先日も近所の本屋にプラプラと寄ってみました。
唐突ではが、私は本業で製造業の会社の設備関係の仕事をしています。
工場の電気設備の責任者ではあるんですが、それだけではなく生産設備の導入や維持・管理なんかもやっています。
で、最近グループの別会社からやってきた新しい社長が、何かと事ある毎に「IoT、AI、RPA」を口にします。
それぞれどんなもんかは、ぼんやりとは知っていましたが詳しく調べた事はなかったので、とっかかりに良さそうな本はないか物色していると、この本を発見。
本当は、どちらかと言うと専門書寄りの書籍を買おうと思っていたんですが、立ち読みでパラパラ見た感じでは、著者自身のRPAの導入体験談が多く載っていたので、こっちの方が面白そうかなと思って購入。
今回は、こちらの「小さな会社が自社をRPA化したら、生産性がグーンとアップしました。」を紹介してみようと思います。
それでは、本題へ。
小林卓矢著「小さな会社が自社をRPA化したら、生産性がグーンとアップしました。」
RPAとは
本の内容に触れる前に、まずRPAというものについて簡単に説明します。
RPAとは“Robotic Process Automation”の略で、ロボットによる自動化を意味します。
RPAでのロボットとは、どっかの未来から来た青狸とか鉄腕原子みたいな人型のヤツではなくパソコン内で動くソフトウェアと定義されているようです。
ここは私も認識不十分だったんですが、自動車メーカなんかが使ってるロボットアームなどは含めないようで、今のところ、あくまでパソコン内のソフトウェアを差すみたいです。
で、そのパソコンのソフトウェアが何を自動でするかと言うと、従来人間が手作業で行っていた繰り返し作業を、そのソフトウェアが覚えて人手を使うことなく実行してくれるというモノです。
パソコンで行う繰り返し作業といえば、経理関係の伝票の入力や、営業マンであれば営業日報などの特定の様式に入力や転記する作業、他には特定のサイトから定期的にpdfファイルをダウンロードするなど、パソコン操作が必要だけど、毎回同じ操作をするってだけの作業があり、まだまだ、私の想像する限りでも枚挙に暇がないぐらいあります。
RPAの導入は、かなりの手間削減になりそうだなぁといった印象です。
本書の内容
本書ではコンサルタント会社を経営する著者が、自身の会社にRPAを導入した際の経緯を書籍化してます。
この本の内容としては、基本的にRPAは便利だよってのを、随所に散りばめながら、著者自身の会社への導入時のいきさつから現在に至るまでを紹介しており、また、スムーズに導入するための経験上のアドバイスを書いています。
RPAを運用するにあたって、会社単位での理想的な組織構成や、導入の手順が割と具体的に記載されているのは、事業として実践しているからみたいで、この著者の会社のホームページを覗いてみると、サービスの主軸の一つにRPA導入支援があるようです。
つまり、この本は著者の本業のPR本って位置付けなんでしょうね。
RPA導入の体験記
この本の著者は、自身でRPAの導入を行った経験を綴っています。
最初は著者の会社の規模が小さく、巨額の投資が必要になるためRPAのベンダーからまともに相手にされなかったと愚痴っていますが、まぁ、そこはしょうがない。
売り手側からすれば、買ってもらえる可能性の高い客から優先順位をつけるだろうから個人事業レベルの零細であれば、後回しにされるのは仕方がないことです。
特に高価な商品で、且つ、使い手側にもある程度の理解がないと使いこなせないかもしれないモノならなおさらというのが、私の個人的な感想。
それはいいとして、著者はめげずにあるRPAソフトウェアを導入します。
その際に、事前に「どんな業務を自動化するか?」といった導入後の具体的なビジョンをもって商品選択から導入研修を受けた方が良いと主張していますが、この辺は、正直「何当たり前の事、ドヤ顔で書いてんだろう?」って思いました。
それも、この事前にどうのこうのって内容は、本書内で何度も繰り返し語られます。
新卒や社会人2年目、3年目ぐらいの子たち向けの意図なんでしょうかね。
とは言っても、私の会社にも20年近く仕事してるのに、いまだに“仕事は結末を具体的に想定してから取り掛かる”ってのができない人間もいるんですけどね。
RPAの導入に関するメリットを力説
本書では、現在のRPAの導入状況は、大手がほとんどで中小企業で導入しているところは、まだまだ少ないとの事。
この本の上梓時期が2019年で今から3年ほど前ではあるんですが、そんなに変わらないだろうと思います。RPAの認知度は、だいぶ向上してるでしょうけど。
著者の主張としては中小企業こそRPAを導入した方が良いと言っています。
現在すでに人手不足が時折ニュースなどを賑わせています。
移民を受け入れるとかって気でも狂ったのか?って案も見聞きするようになり、これから徐々に人手不足が深刻になっていくのだろうと思っています。
そんな中、著者はRPAを導入することによって、これまで人手で行っていた繰り返し作業を無人で行えるようにし、その分の空いた人員を他の仕事へ回すことで、人手不足を補えると主張しています。
ある程度誇張した主張ではあるんでしょうけど、この意見は、私は賛成です。
というのも私は本業で工場内で使う自動機を作る仕事を行っており、人的リソースの少ない中小企業では、部署や業務内容問わず、人手を費やすことなく仕事が回る仕組みを作り出せるかどうかが、将来的な生き残りに大きく影響すると、日々肌で感じています。
なので、著者の主張する内容に関しては、概ね共感でき、意図がよく伝わってきました。
ただし、全てに賛成ではなく、懐疑的に思う点ももちろんあります。
RPA導入の影響
中小企業のRPA導入は、会社として考えるとメリットが多く、今後多くの企業が導入していくだろうと私も思います。
しかし、RPAは“人の仕事を奪うのか?”には、もう少し現実に照らし合わせて考えないといけないと思います。
本書の著者は「RPAはあくまでツールなので人の仕事を奪う事は無い」と書いていますが、これに関して私は、はっきりNOと言います。
RPAは、人の仕事を奪います。
著者は「RPA化で手が空いた人には、他の仕事をさせれば良い」と書いていますが、会社は、自社の仕事量に合わせて、必要な数の人を雇います。
決して、人の数に合わせて仕事を作ったり、手の空いてる人がいるから、今までやらなくてもよかったような仕事をあえてやらせるなんて無駄な事を、会社はしません。
本当に必要な仕事は、すでに誰かがやってます。
なので、RPAによって手が空いた人は、仕事奪われ、最悪の場合、会社に居場所が無くなる事に繋がります。
但し、RPA化で手が空いた人全員が仕事を奪われるかと言うと、そうではなく、仕事を奪われるのは、主に非正規雇用者です。
RPA化で手が空いても他の仕事に回してもらえるのは、正規雇用の社員や、非正規であっても他の業務に適応できるスキルのある人間ぐらいです
それでも非正規雇用者の場合は、スキルがあっても空席がなければ仕事を失うだろうと思います。
なぜここまでハッキリ言いきれるかと言うと、前述したとおり私は本業で、自動機を作っています。
これまでも何台か機械を導入していますが、その都度、自動機を入れる前に、その作業をしてくれていた派遣社員の人が、自動機導入に合わせて契約満了となりました。
つまり自動機に仕事を奪われているんですね。
RPAもコレと同じことが起こるのは、まず間違いないと思っています。
私自身の実体験から、著者の主張する「RPAはあくまでツールなので人の仕事を奪う事は無い」にNOと言えるのです。
RPAの今後の展望
本書で著者は、RPAは今後、企業のデファクトスタンダードになるだろうと明言しています。
私もこの意見には同意で、RPAは益々導入されていくだろうと思います。
但し、低単価なRPAソフトも出てきているようですが、爆発的に普及するにはサードパーティ製のソフトウェアでは、まだ弱く、私が想像する最速の普及経路は、やっぱりMicrosoftが、この分野に力を入れることだと思います。
Microsoftが、Windowsの機能または、Officeの一つに新たに加えて導入のハードルが無くなり、且つ、使用に必要な情報(ネットのサイトや書籍)が広く出回ってくれば、恐らく、世の中のほぼ全ての企業が利用するようになるでしょう。
まとめ
今回は本業に直結する内容の本の紹介だったので、万人向けになりませんでした。
今のところ私は、勤め先のRPA化の仕事を振られていないのですが、もしかしたら指名されるかもしれません。
もし指名されたら、この本の著者の会社にでも打診してみましょうかね。
そう思うぐらい、この本は読んで良かった。
RPA化に関して右も左もわからないって方には、入門用にこの本はオススメです。
じゃ、そんな感じでノシ